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ルパン三世「峰不二子という女」:ヘーゲルの箴言を撃ち抜いて [タイトル:ラ行]

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子供の頃に観た「ルパン三世」はコミカルにキャラクタライズされた2ndシーズンだった。だから大人になってから宮崎駿演出の最終二回やカリオストロを観たり、アクションでの原作漫画を読んで、イメージしていた以上に大人の娯楽作品として作られていたことに驚いた。

そしてその大人っぽさの中心にあったのはいつも峰不二子だった。



その峰不二子にフォーカスした、その名も「峰不二子という女」という新作のニュースが飛び込んできた時は胸が高鳴ったが、概ね予想していた通り北海道では放送がなく、DVDボックスを購入してまで視聴させてもらった。

隅々まで気を配った出来のよいボックス・パッケージだった。




作品の出来も素晴らしく、新しい時代のルパン三世を見事に作り上げていた。

ルパン三世のあの雰囲気は半分くらい大野雄二の音楽が作り上げているわけだが、菊池成孔がそれをはるかに凌駕するスリリングな音像を形成していた。



山田康雄に加え、納谷悟朗をも喪ったルパンワールドは、今回声優陣を大きく刷新した。

峰不二子は、大人の主役を演じるのに今この人以上の声優はちょっと思いつかない沢城みゆきさんが、憂い、そして狂気にとらわれる不二子を見事に演じた。

納谷さんを喪った銭形警部は新たな声を、山寺氏に預けた。熟練の名演だった。

歪んだ愛情で銭形を慕う青年刑事オスカーには、永遠の主役声、梶裕貴が担う。梶じゃなかったらあのオスカーは救いのない役になったろうなあ。



もともとの漫画アクション連載時の峰不二子は、三銃士のミレディをモデルにした典型的な悪女だ。(そういえば、こちらにも「妖婦ミレディの陰謀」って映画がありましたね。エマニュエル・ベアール!)

作者のモンキー・パンチは当時女性の絵をセクシーに書くのが得意ではなく、わざわざ絵の専門学校に二年も通ってヌードモデルのデッサンを重ね、不二子の絵をブラッシュアップしていったのだという。



名前の由来は少々不真面目で、たまたま目の前にあった富士山のカレンダーに「霊峰不二」と書いてあったのを見て、霊を取って子を付けてみるとなかなかいい字面になったので、これにしたという。



アニメ版の峰不二子はハーレーのFat Boyに革のつなぎを着て乗り回す。

映画「あの胸にもう一度」のマリアンヌ・フェイスフルをモデルにしたと聞いた。

確かに似ている。










さすが今回は不二子が主役とあって、決定版的な造形だ。










それにしても作品が変わる度に不二子の顔も変わるのに、いつもそれが不二子だとわかる。

ま、それが峰不二子という女なのだろう。





ところでこの「峰不二子という女」には梟がよく出てくる。

敵役も梟のマスクをかぶっている。

ルパンは、不二子の周辺にいつも現れる梟人間を「ミネルヴァの梟」と呼ぶ。









ミネルヴァの梟とは、弁証法で有名な哲学者ヘーゲルの主著のひとつ「法の哲学」の序文に出てくる、



「ミネルヴァの梟は夕暮れに飛び立つ」

The owl of Minerva first begins her flight with the onset of dusk.

に由来するものだろう。

これだけでは意味がわからないので、関連する箇所を引用してみよう。

「なお、世界はいかにあるべきかを教えることについて、ひとこと言うなら、いずれにせよ哲学は、そのためにはいつも遅すぎるのである。哲学が世界についての思想を時代の中に現れるときには、すでに現実はその形成過程を仕上げ、自らを完成させてしまっている。必然的に概念が教えることは、同様に歴史も教えている。すなわち、現実の成熟することのうちに、観念的なものが、まず現実的なものに対して互いに現れ始め、そして、前者(観念的なもの)は自らを、現実的な世界をその実体において把握して、知的な王国の形に築き上げるのである。」

哲学者の言葉はどうにもややこしいので、少し乱暴だが要約してみると、哲学とは現実の成熟のあとに遅れてやってくるものであり、現実が完成されてはじめて、観念や哲学の王国が建設される、ということだ。

まず実態があって、理論は後から追いかけてくるのである。
終わってみなければ誰もわからない。それが現実だと。


漫画アクションという週刊誌の創刊に合わせて、ルパンの顔も決めないまま始まった連載が、ここまで国民的な作品に育つのだ。
作者が顔を決めきれなかったので、ルパンは変装の名人になった。
ルパンの連載がはじまり、国内での好評を受けすぐにアニメ化が決まり、じゃあってんでアメリカのコミックフェスまで出かけていったら、ちっともオリエンタルじゃないと不評だったので、石川五エ衛門がメンバーに加わった。
不二子は連載を続けながらヌードデッサンを重ねて絵を完成させていった。

未だ来てない未来なんて憂いていないで今を生きていこうぜ、とルパン三世という作品全体が僕らに教えてくれている。
その象徴が「ミネルヴァの梟」だったんだと思う。

いや、ルパンの弾丸は確かにミネルヴァの梟のマスクを貫いた。そして「峰不二子という女」のラストシーンは、TVシリーズ「ルパン三世」のオープニングに繋がっている。
ヘーゲルの箴言さえも撃ちぬいて、何度でもやり直せるさ、とうそぶいているルパンの後ろ姿が見えた。




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