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人類政治史のメタファーをゾンビ×スチームパンクで描く冒険活劇『甲鉄城のカバネリ』 [タイトル:カ行]

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『甲鉄城のカバネリ』というアニメ作品をまとめて観た。







ゾンビ×スチームパンクという仕立てで、近年の小説、アニメの世界では円城塔(伊藤計劃原案)の『屍者の帝国』と同じ設(しつら)いということになる。



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ゾンビに限らずホラー系のフィクションは苦手だが、映画の『桐島、部活やめるってよ』で神木隆之介くんが言ってたから、ゾンビ作品の起源的作品がロメロ監督の『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』であることくらいは知っている。



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この時ロメロが作ったゾンビは、二つの要素が入り混じったハイブリッドゾンビだった。

基本形はブードゥー教の秘術で、奴隷として使役するために死者を蘇らせたもの。

そこに、吸血鬼の人を咬み、咬まれると吸血鬼になるという伝染の恐怖を加えてある。

以降、多くのゾンビ作品がこの類型に沿って作られた。



で、この『甲鉄城のカバネリ』では、「カバネ」という怪物がそのゾンビにあたる。






屍という字には「かばね」という読みがあり、その意味でゾンビの類型だが、ウィルスによる感染で理性を失った状態で動いているという設定のようで、厳密には死んで蘇ったものではないが、咬まれると伝染するという属性も類型通り。

そしてそのウィルスに体は感染しながらも脳までの侵入を拒み、人格を維持したまま「カバネ」になったものを「カバネリ」と言っている。



監督のインタビューによれば「舎人(とねり)」の「リ」を「カバネ」に加えたもので、 屍と人の間(はざま)にあるものという意味だという。



スチームパンクについては、詳しくはWikiをご参照いただくとして個人的なスチームパンクとの出会いは、たぶん超有名作『ディファレンス・エンジン』ではなく、大友克洋の映画『スチーム・ボーイ』であった。



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ヴィクトリア朝時代という産業革命の時代性がスチームパンクの肝だと思う。

産業資本家の発言力が伸長したことにより起きた、選挙法の改正や自由貿易の拡大、重工業への世界的シフトによる経済覇権の揺らぎの時代。

この激動期だからこそ許された旧時代性と新時代性の共存が、後のスチームパンクに現れた「歴史改変SF」としての特性になったのだろうし、現代のスチームパンクに特徴的な「時代錯誤テクノロジー」の面白さに繋がっているのだろう。

この『甲鉄城のカバネリ』でも、江戸時代的な時代描写に、超現代的な機械設備と医学技術の時代錯誤感が効いている。







しかし、人間がウィルスに感染してモンスター的なものに変化する「カバネ」が、どのようにして産まれたのかや、時代錯誤的テクノロジーの来歴については語られず、歴史改変的ではない。

充分に歴史改変的な要素を持っている作品世界だっただけにそこが残念なところだが、ワンクールの尺では追いつかないだろう。そのくらい濃密な活劇ではあった。



そう、これは活劇である。

ヒロインである美しい少女「無名(むめい)」によるアクロバティックな「殺陣」が本作品の最大の見どころ。

平服モードでは、鋼鉄製で鈴があしらわれた下駄でカバネの首を斬る。












戦闘服のモードでは、空中を跳ね回り、二丁ライフルで殺しまくる。

表情はあくまでもニコヤカであるのがコワイ。













キャラクター・デザインは美樹本晴彦氏で、氏の繊細でちょっと潤んだ筆致の原画が時々そのまま使われているシーンがあり(耳の処理でわかる)、それがこのアニメ作品のコアな「表情」になっていると思う。






つい可愛い無名ちゃんの紹介ばかりになってしまったが、この物語の真の主人公は「野良のカバネリ」である生駒(イコマ)である。






カバネの産まれた理由は語られないが、「野良のカバネリ」という台詞が示すようにカバネと人のハイブリッドであるカバネリが人工的なものであることは語られている。

 「野良でない」カバネリは権力側によって作られるが、あくまでも権力を守るための「軍事力」だ。

世界はカバネに汚染され、農業を営む充分な土地がない。

が、カバネリの力でカバネを一掃し民を養うという思想が、権力側にはない。

権力に楯突くものはいるが、私怨からであったり新しい権力者になりたいものしかいない。

そしてこれは長い人類社会の歴史の、正確でコンパクトなメタファー 。



王政、宗教による世俗支配、官僚制の腐敗、共産制の腐敗。

人類の政治史は、権力があるかぎり善政が長く続かないことを証明している。

そして善政の原点が末端の民草にあるということも。

この短い「甲鉄城のカバネリ」というゾンビ×スチームパンクの冒険活劇の裏側にもその基本思想が息づいている。

進撃の巨人との類似性を取り沙汰される所以である。


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