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『この素晴らしい世界に祝福を』:そしてこの生きにくい世界には寛容を [タイトル:カ行]

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『この素晴らしい世界に祝福を』というやつをさっきまで観てたのですが、キャラ設定が個人的にツボで、ラストまで一気に完走できました。

異世界もの、というジャンルの一作。
このところラノベで量産され、アニメ化も多いです。
先行作品にはけっこうなパターンがあるんですが、近年の異世界ものはだいたい、現実社会ではうまくいかずヒキコモリになってしまったゲームオタクが、なぜか異世界に転生して、無駄に肥大したゲームスキルを活かすか、チート的な異能力を授かって、おお、ここに自分の本来の生の充実があったのかというパターンのものが多いようです。
この素晴らしい世界に祝福を!  第1巻 [Blu-ray]

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  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
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そういうわけで、この種の作品ではよく、「現実は無理ゲー」というセリフが使われますね。

いったんこのサブジャンルを「異世界転生もの」ということにしておくとして、最近ラノベ界での、このジャンルの出版点数は異常なほどです。
それはきっと本当に「現実が無理ゲー」になってきてるからなんじゃないか、と思うわけです。

現実とゲームを対比することは、実は簡単ではありません。
もっと正確に言うなら、現実の中にあるゲーム性を分離して捉えることが難しいということです。

『論理哲学論考』を書いて、ギリシャ以来の西洋哲学のすべての問題を「結局、問いが間違っていた」と切り捨てたヴィトゲンシュタインが、長い期間一線を退いた後、結局生きるということは「言語ゲーム」であると結論付けたように、社会の中で生きていることそのものがある種のゲームであるということは、ほぼ間違いないことのように思われます。

論理哲学論考 (光文社古典新訳文庫)

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  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2014/01/20
  • メディア: Kindle版


ノイマン型コンピュータにその名が残るフォン・ノイマンが骨格を提示し、映画『ビューティフル・マインド』にもなったジョン・ナッシュが磨きあげた「ゲーム理論」は、人間の行動一般をゲームモデルで解析できるようにしてしまった。
だから「現実は無理ゲー」という言葉はふざけているように見えて実際には切実です。

もっとも美しい数学 ゲーム理論 (文春文庫)

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  • 作者: トム ジーグフリード
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2010/09/03
  • メディア: 文庫


また「異世界転生もの」の鍵になるのが「チート」と呼ばれる 、コンピュータゲームのプログラムに忍び込ませた「ずる」で、このような「個性」の獲得によって転生した者は生の充実を得るわけです。

そしてゲームが現実世界の一部ならば、現実の世界にも「チート」は存在します。
例えば「格差」
親の収入や住んでいる場所で、その人の人生はずいぶん違ったものになるでしょう。
だから、学校という場所ではそういう格差と隔絶して(それこそがどんな初等・中等教育機関も校門と校地を囲む塀を持っている理由です)、育ちで差が出やすい芸術に関する科目を受験科目から排除しているのです。

しかし述べてきたように人間の生はゲームとは分かちがたく、そんな環境の中でも、例えばカンニングのようなチート技を現実でも編み出し続けてきた。
そしてまたその穴を塞ごうと必死でパッチを当てるわけです。
いつも他人の行いに眼を光らせ、正義の名のもとにクレームを発動する。
そして消防団員が消防車で公務の合間にうどん屋に寄ることさえクレームがつくような社会を僕たちは作り上げてしまった。

かくして社会はパッチだらけになり、いよいよチートの余地はなくなり、だからこそ下から這い上がることができない「無理ゲー」になったのではないでしょうか。
格差を排除しようとして、格差を解消する手段を塞いでしまったんじゃないんでしょうか。
不公平を是正しようとして、他者を引きずり下ろす仕組みばかりを一生懸命作ったから、下にいる人が上に上る道も塞がってしまったんじゃないでしょうか。

寛容さが必要だ。
異世界転生ものの異常な増殖をみるとそう思わざるを得ません。ま、実際面白いんですけど。




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